清楚咲夜の日記

何らかの研究をしている私が、趣味について綴るブログです

大きな学校法人の専門学校には進学しない方がいい理由

皆様いかがお過ごしでしょうか。清楚咲夜と申します。

今回は高等教育機関に携わっている私が、「コラム」として高等教育機関の進学を扱ってみようと思います。

主にこの記事を読む方を、①高校の進路担当教諭、②保護者、③大学・短大関係者を対象として記事を書きますので、大部分が"本音"であり"現実"です。

 

ここでいう「大きな学校法人」とは、全国各地に専門学校がある某学校法人滋K学園や、某学校法人3K学園や、某学校法人NK財団がメインになってくるかと思います。小さな(全国展開していない)専門学校や、社会的に評価されている(と思われる)O原学園はこの限りではないと思われます。また、内容の一部は法人によって正しいものではありませんが、全体の傾向と捉えていただいて間違いは無いかと思います。

もちろん、専門学校を否定することはありません。しかし、実情はこうです。ということを知っていただきたいと思います。

 

1. オープンキャンパスは"リアル"ではない

初めに「オープンキャンパス」を設定した理由として、昨今、「大学全入時代」と言われるように、大学・短大・専門学校の入学定員に対して18歳人口(ここでいう18歳人口とは、高校卒業者の約半数が高等教育機関等に進学するため、純粋な18歳人口を2で割った人口をいう。)が少なく、選ばなければ大学に進学できるという現象が起きています。

日本私立学校振興・共済事業団(2023)によれば、大学では5以上割が、短大では9割以上が入学定員を満たすことができていません(入学定員未充足)。

この中で、入学定員充足率を上げるために各高等教育機関は入学者を確保するために「学生募集活動」を行っています。保護者の方は「学生募集活動」について詳しくご存知ないと思いますが、教育関係者であればある程度知っていることでしょう。

高校訪問や進路ガイダンス、また今回取り上げる「オープンキャンパス」もその一つです。

恐らく、大多数の方が「オープンキャンパス」に参加したことがあるのではないでしょうか。私は「オープンキャンパス」に参加したこともありますし、学生スタッフとしてオープンキャンパスに携わったことも、教職員として企画・運営したこともあるのでその実情をお伝えします。

 

よく、オープンキャンパスでは、チラシやホームページなどに「学校の雰囲気を知ろう!」とか「学生の様子を感じよう!」などと書いてあります。

本来であれば大学・短大を含めて紹介しようと思いますが、尺が限られているので、今回は業界全体像と専門学校、とりわけ大きな法人・複数の専門学校を有する学校法人に焦点を当てて見ようと思います。

まず、全体的な傾向としてオープンキャンパスが行われた背景から考えなければなりません。立教大学が始まりとされており、そもそもの目的は「進学対象の高校生が入学後の学修イメージを把握すること」や「自大学で学ぶ事に対して熱烈な意欲がある者」を募集するために、大学を開いたものでした。

こちらのサイトが参考になりますので、併せてご覧ください。

しかし時を経て、「少子化」と叫ばれるようになりオープンキャンパスの目的は「学校法人の経営悪化を防ぐ営業活動」として、質を問わず学生を獲得するための運動に変遷しました。

ここでの問題点として、私が勤務したことがある学校法人を例に考えてみましょう。

  1. 参加者に金券をプレゼントする
  2. 交通費を補助する
  3. 学校を"よく"魅せる

まず①ですが、オープンキャンパスに参加した生徒に対してアマゾンギフト券や図書券と言った金券を配布して参加者を増やす「餌で釣る」タイプのオープンキャンパスです。参加者にとっては「金券がもらえてラッキー」ですし、法人にとっては「参加者が獲得できてハッピー」であることに違いはありません。

しかし、教育の本質を考えたときに、その金券はどこから費用が捻出されているのか、オープンキャンパスに参加する理由は金券がもらえるからなのか、といった問題が生じます。

オープンキャンパスのみならず、学生募集活動(広報活動)は多額の費用がかかります。法人によって異なりますが、電車広告・新聞広告・進路ガイダンスブース参加費用、進学サイト掲載費用、パンフレット制作費用などなど合わせれば優に1,000万円を超えます。これら費用の一部は私立学校振興助成法に基づく「私立大学等経常費補助金」(私学補助金)と在学生の「学生生徒等納付金収入」(学費)によって捻出されています。我々教職員の給与の一部にもこれが含まれています。これら広報活動の一部は間接的に我々の税金が使われているともいえます。

令和4年度学校基本調査によれば、専門学校は全国に2,700校以上あり、それぞれ定員が100名だと仮定しても270,000人の入学定員があります。現実には、毎年25万人以上が入学をしています。

では、なぜ「オープンキャンパス」がリアルではないのか、というところです。

全国に2,700校以上、そして様々な分野がある中で、ここでしか学べない唯一の専門学校というのは数えられる位に少ないでしょう。

分野で見れば、例えば「調理」にしろ「美容」にしろ、運営法人や学校名が違えど根本的なカリキュラムは似たか寄ったかで、差別化が難しい部分になります。

そのため、教育内容で勝負するのではなく先述した施策をはじめオープンキャンパスに参加した者に対して「いかに素晴らしい学校・雰囲気であるか」を演出することをして差別化するほかありません。オープンキャンパスは貴重な体験ではなく、巧みなマーケティング戦略の一環であり、消費者は騙されると言えるほどです。

 

実際にオープンキャンパスのアンケートを作成した身からすると、質的な部分ではありますが自由記述を見ると、「先生が親身になってくれた」や「学校の雰囲気がよかった」「建物が綺麗だった」というように、教育内容よりも雰囲気や綺麗さといったホスピタリティに関するレビューが多く散見されます。

つまり、本来のオープンキャンパスの目的から世論がズレて形成されていると言わざるを得ません。

また、保護者の間では「オープンキャンパス」に行かないと不合格にされるといった印象をもたらしたのもイメージ戦略として成功していると言えます。

そして、専門学校ではオープンキャンパスに参加することで「AO入試」のエントリーが得られるという特典があります。

つまり、オープンキャンパスに参加することは義務化された動機づけとして機能しているともいえます。

こういったイメージをもとに、大きな学校法人の専門学校で行われている学生募集活動の戦略をまとめてみましょう。

  1. 資料請求者を囲い込む
  2. オープンキャンパスの参加を促す
  3. オープンキャンパスに複数回参加させる
  4. AOエントリーを獲得させ早期に合格を出す

と言った具合に、オートメーションされた戦略にはめられています。

 

話を戻して、なぜ「リアル」ではないのかを考えましょう。

先述したように、来校者に与える「イメージ」が進学影響を及ぼしていることは確かであり、オープンキャンパスを行うに当って参加者の裏側では次のような事が行われています。

  1. 来校者に「営業感」を感じさせないシナリオ作り
  2. 親身であることをアピールするセールストーク
  3. 在学生に「良いところ」をアピールするように打ち合わせする
  4. 参加者の進学希望度をランク付けする
  5. 参加者のパーソナリティをデータベース化する
  6. 雰囲気づくり・準備は入念に。

これら行動が行われていることで、先ほどのような「対応が良かった」「きれいだった」という評価が得られるわけです。

専門学校のリアルは、教室では食っちゃ寝する学生はいるし授業に来ない人は多いし、オープンキャンパスのような「優しい」教員はごく稀です。

勿論、真面目に勉強をして専門知識を身につける学生もいます。しかし、後述する「入試制度」に照らせば、ごく少数としか言い得ません。

オープンキャンパスに参加する学生スタッフはわずか一滴の上位層がスタッフとして参加しており、決してリアルな学校の姿が見られる機会とは言えません。

 

2.基本的に「全入」で3つのポリシーに適合していない

先ほどのオープンキャンパスと内容は重なりますが、昨今は「年内入試」という言葉があるように、総合型選抜・AO入試・指定校推薦選抜など「推薦型選抜」で入学を決める方が多くなりました。

大学は入学定員の5割を一般入試選抜で抑えなければならないという文部科学省からの通達(入学者選抜実施要項)がありますが、短大・専門学校ではこの限りではありません。短大は試験の実施について、先述した文部科学省からの通達(入学者選抜実施要項)に従う必要がありますが、専門学校の設置は各都道府県の長なので、これに従う必要がなく、各都道府県に設置されている高等専修学校の団体に従うだけです。

大学・短大は学校教育法第1条に定められた「一条校」ですが、専門学校(専修学校)は一条校ではありません。

短大・大学の入試は総合型選抜が最も早く、9月1日からの出願を認めています。一方で、専門学校の場合は「エントリー」という制度があり、これはおおよその都道府県で6月1日から認められています。

「エントリー」というのは出願者にとってはAO入試という比較的入りやすいという印象が持たれる入学者選抜において「出願を認められた」という証明であり、早期に合格できる可能性が大きくなるものです。学校側からしてみれば、早い段階から入学定員を充足できる可能性が高まるものであります。基本的に推薦型選抜は単願であり、他の学校を受験する可能性が減少するからです。保護者にとっても高校の進路担当教諭にとっても、早く進路が決まるので「三方よし」みたいなものです。

短大・大学の総合型選抜が9月から始まるのに対して、専門学校のAO入試における「エントリー」は6月から可能であるため、受験者の出願意欲有無に関わらず、先述した広報の取組みに照らせば、学校側から受験希望者に猛プッシュできるわけです。

これによって、専門学校のAO入試では「早く合格が決まる」「進路を早く決めて高校生活を楽しもう」などという"甘い"誘い文句が横行しているわけです。

 

ここで、明確な基準を持つ短大・大学の「総合型選抜」と専門学校の「AO選抜」は何が違うのか、という点を確認しましょう。前者は、志望学科の学習意欲や学修後の進路はもちろんのことですが、「学力」を含めた総合的な評価を行います。2021年にAO入試から総合型選抜に変わりましたが、AO入試の時でも大学によっては「評定平均値4.1以上」や「評定平均値がAであること(4.3以上)」といった出願要件が課されていたことから伺えるように、総合型選抜の評価指標の一つに学力があります。一方で、未だに「AO入試」として扱っている専門学校の多くは学力を考慮せず、志望校での学習意欲や進路予定などを設問します。したがって、大学では単に「学びたい」だけでは通用せず、高校での学習成績を評価されます。

 

一方で、入学定員という面から考えると、この段階である程度人数を確保しなければ入学定員未充足となり、経営に響きます。1年間の学費が100万円だとしても、2年課程であれば1人で200万の損失となり、充足できない人数が増えるほど経営が悪化していきます。

また、大学や短大のように文部科学省に定められた入試の運用をしているならともかく、AP(アドミッション・ポリシー)の適格性があるか曖昧な学校では、基本的なスタンスとして「どのようなバックグラウンドを持つ人でも歓迎」という考え方であり、建前としての「入試」でしかありません。

つまり、AO入試は専門学校を多くもつ法人の経営にとっては最も都合良く学生を確保でき、このことが勉強のできる人と勉強のできない人の差を作りだしています。

前まで、大学のAO入試はバカでも受かる、というような言われ方をしていましたが、今はそんなことはありません。寧ろ、専門学校は勉学の差を一層強固なものにしているとまで言って過言ではありません。

 

3.教育の質より「退学者を発生させない」に徹する

先述した入試方法、ポリシー適合に続きますが、多様な人を受け入れるということは、対照的に学力に見合わない・ついていけない学生を作りだすことに繋がります。

高等教育は「社会的モラトリアム」の期間であるため、自身の今後の人生について考える時間がたっぷりあります。勉強を進める中で、「やはり自分が学びたかった内容ではない」ということもあるでしょう。

このようなことが生じることは防ぎきれませんが、可能な限り起こさないようにするのがオープンキャンパスの役割でもあり、入試でもあるわけです。しかし、多くの人を受け入れる専門学校は考え方が異なります。

第一に、「生徒・学生をお客様と見ていない」ことにあります。専門学校は性格上、専門性を持った学生を育て可能な限り社会に出てすぐに活躍できる人材を輩出する期間であるため、お客様と見ないことはある意味正しいのかもしれません。しかし、今や私立学校を運営する法人は生き残りが問われています。そのため、私立大学では「学生をお客様と思え」と指導されました。なぜか?というと、学生がいなければ法人の経営に響くこと(私立なら1人当り400~600万/4年間 確保できるため。)がありますが、学生募集の観点で見ても「良い口コミを発信してくれる広報」と見なすことができるからです。しかし、専門学校の多くは建前上「生徒の就職をサポートする」と言っていますが、実態はつながりのある企業に就職を斡旋するほかありません。つながりのない企業に対しては、学生が自ら活動して。というスタンスですし、勤務した中では履歴書の書き方を指導できるほどの技術力があるとは思えませんでした。お客様というよりも、金のなる木としか思っていないんだな、他人の人生には興味がないんだな、と感じました。

第二に、「学校を辞めたい」という学生に対してサポートを注力するという点です。具体的に「体調が悪いのか」などヒアリングを行いますが、建前では「学校を辞めたら人生この先なにもできなくなる」や「将来とっても活かせる分野だからもっと勉強しよう」と言っていますが、本音は「退学率を減らしたい」「退学による自身の成績(評価)を下げたくない」という教職員本位の行動に過ぎません。

退学させないために話し合いは長期に渡って行われます。辞めたくなったら相談をする間を作らずにしないと、そのままズルズルと長引くことになります。

 

4.「入ったらいけない」を見分ける技。

これまでに記してきたことを要約しながら、専門学校への入学を考えている方がいらっしゃるようでしたら、まずこれだけを抑えて、本当に「入って良かった」と思える学生生活を送ってもらいたいです。また、これは専門学校だけでなく大学にも言えるかもしれません。

 

資料請求・オープンキャンパスでの違和感

高校生や保護者なら誰しも「オープンキャンパスに行かないと受験できないのでは?」や「オープンキャンパスに行った方が入試で合格する可能性が高くなるのでは?」と考えるかと思います。そんなことはありえません。オープンキャンパスオープンキャンパス、入試は入試です。

私から、「避けた方がいい学校」の抑えてほしいポイントを記します。

  1. 資料請求後、電話やLINEがあるところ
  2. 次回のオープンキャンパスに参加するように執拗に迫られる
  3. オープンキャンパス参加後、LINEやメールで担当者からメッセージがある
  4. 頼んでもないのに、不定期に資料が届く
  5. 「雰囲気のよさ」や「距離の近さ」をアピールしている
  6. 1年間にわたって何十回もオープンキャンパスをやっている

 

オープンキャンパス参加で何かもらえるところ

  1. 参加するとギフト券がもらえる
  2. オープンキャンパス参加の交通費が出る

 

入試の違和感

  1. オープンキャンパス参加でAOエントリーを勧められる
  2. AO入試ばかりを勧められる
  3. 学費の負担減の説明が多い
  4. 倍率が公表されていない

 

抑えるポイントはこのくらいでしょうか。

学費については、正直なところ、専門学校と短大で大きな違いはありません。寧ろ、短大の方が安いこともあります。

短大と専門学校で迷っている方がいるようでしたら、「短期大学士」と「専門士」で検索してみてください。前者は学位であるのに対して、後者は称号です。日常生活ではあまり影響を受けませんが、学位が授与されるということは国際的に通用する資格を得るということと言えます。称号はあくまで本人が称することができるという資格に過ぎないので、実質的な違いが大きくないと言えど、学位の方が厳格であると言えます。

 

個人的な話にはなりますが、ここ十年で短大が低迷し専門学校が比較的堅調である理由として、入試制度・入りやすさ、学生募集にかける費用の違い、学校教育法で厳格に定められているか否かだと考えています。

 

昨今では、リカレント教育や終身雇用の崩壊と言われて久しいです。そんな中、「卒業すぐ」を考えるだけでなく、長期にわたるキャリア形成という意味も込めて、短大の進学者がもっと増えるといいなあ、と思っています。

 

今一度、進路について考える機会があるのであれば、専門学校だけでなく「短大」や大学という選択肢まで広げて考えてみてください。